しくりくりしをするとなぜ売上原価が分かるのか?

日商簿記検定3級では売上原価の計算問題が必ず出題されています。
そのときに使う呪文「しーくりくりしー」
暗記してそのまま使っちゃえば何の問題もないのですが、意味もなくこんな仕分けをするのは変ですよね。
なぜこんなことをするのでしょうか?

一緒に考えてみましょう。

「しくりくりし」の意味って?

仕入れ  ○○ 繰越商品 ○○
繰越商品 △△ 仕入れ  △△

と仕分けすることを「仕入れ繰越商品繰越商品仕入れ」の頭文字を取って「仕繰繰仕(しくりくりし)」と言われます。
なぜこんなことをするのかを考えみましょう。

簿記の目的って?

簿記の目的って何でしょうか?
簡単に言えば、会社や個人事業主の経営状態を把握することでしょうか?
どんぶり勘定でやっていては、会社が利益を出せているのか?それとも利益が出せず赤字に陥ってしまっているのかが分かりません。

そこを明らかにするために簿記を学びます。
また、会社や個人事業主が1年間にどれだけの利益を上げたのかが分かるとその利益を元に税金の額が計算をすることができます。

つまり会社や個人事業主の経営状況・成績を把握することと税額の計算のためとみるとイメージがつきやすいと思います。
特に今回の「しくりくりし」を理解するためには税額の出し方に着目するとイメージがしやすくなります。

税額の計算を元にしくりくりしの意味を考えよう

税金ってどのように計算するのかご存じでしょうか?
簡単に言ってしまうと、利益の額に税率を掛けると税額を計算することができます。

たとえば100万円の利益がでたときに税率が10%としましょう。
すると100万円×10%となり納める税金の額は10万円ということになります。

このイメージを持って「しくりくりし」の意味を考えると「しくりくりし」をする理由が分かります。
きちんとイメージを持っておいてくださいね。

しーくりくりしーで売上原価が分かる?!

例を使って、「しーくりくりしー」の意味を説き明かしていきます。

2019年1月にいよかん商店という個人事業を始めたとします。
いよかん商店は1月1日から12月31日を1年とします。

いよかん商店の事業内容は、ミカンを仕入れて売ります。
ミカンは1つ100円で仕入れて150円で売ることにします。

2019年
いよかん商店は1年間で10個のミカンを仕入れて、8個のミカンを売りました。

この時の利益を考えますよ。

8個のミカンを売ったので売上は150円×8=1200円です。
この時の経費(売上原価)はいくらでしょうか?
100円のミカンを10個仕入れたので1000円が経費になるのでしょうか?

ミカンの仕入れ1000円を全て経費(売上原価)にして良いかは、税額の計算を目的にすると分かりやすくなります。
税金は、利益に税率を掛けて求めるんでしたね。
税金をあまり払わないようにするには、経費を増やせばあまり払わなくていいことになります。
いよかん商店は1000円を払って仕入れてはいますが、まだミカンを8個売っただけなのでミカンを2個もっています。

もし、このミカン全てを経費(売上原価)にするとすると、意図的に税金を減らすということが可能になります。
どういうことかというと、12月31日のような年度末に大量に仕入れることで、税額を減らすことができてします。
そんなことができると、年度末に税額を意図的に調整、できてしまいます。
税額が意図的に操作できるのはあまりいいことではありません。
1)また、この仕入れは次の年度には、仕入れ価格が0のミカンということになってしまい、次の年の利益率が異常に高くなってしまいます。こうなってしまうと、正しい経営状態も把握できないということになります。もう、帳簿をつける意味が薄れてしまいます。
そのため、この残ったミカンは経費(売上原価)に参入せずに、資産として扱い実際に商品を販売した年度に経費として計上されることになります。

商品(ミカン)が1つ売れたときの仕訳を考えると

これをミカンが1つ売れたときにきれいに仕分けをするとすると
仕入れ100  売上150
利益  50
こんな感じになりますよね。
ただ日々こんなことをしていれば商業活動をするときに帳簿をつけるだけで手いっぱいになってしまいます。

そのため1度仕入れたものを一旦全て仕入れ勘定で経費にしてしまって、年度末に仕入れたモノの残り分を経費から取り除くという作業をします。
つまり、2019年のいよかん商店の仕分けは、

期中
仕入れ1000 現金1000
現金 1200 売上1200

年度末
繰越商品200 仕入れ200

年度末に仕入れを逆仕訳して、相殺しています。
つまり、仕入れとして経費になったのは1000-200=800円で売上高は1200円となります。
つまり税額は税率を10%とすると
$$(1200-800)\times 0.1=40$$
となります。

でも、ちょっと年度末の仕分けが変ですよね?
「しくりくりし」だったのに前半の「しくり」がなく「くりし」しかありません。
「しくり」がない理由は次年度をみると分かります。

2020年いよかん商店は1個100円でミカンを15個仕入れて16個のミカンを1個150円で売りました。
この年のいよかん商店の帳簿はどうなるでしょうか?

期中
仕入れ1500 現金 1500
現金 2400 売上高2400

となります。
2020年度末の仕分けを考えてみます。
2020年は2019年の仕入れ分2個のミカン(繰越商品)をもったところからスタートしました。
まずはこれら2つのミカンを仕入れ勘定にいれて経費に入れましょう。
繰越商品は資産勘定なので、貸方に書いて繰越商品をなくし、仕入れ勘定に振り替えます。

仕入れ200 繰越商品200
次に2020年は2019年に仕入れたミカン2個と2020年に仕入れたミカン15個を合わせた17個の中から、16個売ったので、残りのミカンは1個ということになります。
このミカンはまだ売れていないため経費(売上原価)にいれてはいけません。
仕入れ勘定から繰越商品に振り替えて仕入れからはずします。

繰越商品100 仕入れ100

先ほどの仕訳と合わせて、「しくりくりし」の完成です。

2019年度は事業を始めた年だったので、前年の繰越商品がなかったため「しくり」がなく、「くりし」のみとなっていたということです。
きちんと流れがつかめると、「しくりくりし」の意味も分かりますね。

まとめ

今回は「しくりくりし」について考えました。

仕入れ  ○○  繰越商品 ○○ ←前年度の持ち越しを経費に入れる仕分け
繰越商品 △△ 仕入れ △△ ←今年度在庫として余った商品を仕入れ(経費)からはずすための仕分け

ということになります。

ちょっと意味が分かるとスムーズに簿記の学習を進めることが出来ますよ。

References   [ + ]

1. また、この仕入れは次の年度には、仕入れ価格が0のミカンということになってしまい、次の年の利益率が異常に高くなってしまいます。こうなってしまうと、正しい経営状態も把握できないということになります。もう、帳簿をつける意味が薄れてしまいます。